企業概要
豆蔵デジタルホールディングス(証券コード202A)は、製造・流通・金融など多業種に向けてDXコンサルティング、クラウドネイティブ開発、AI・IoTソリューションをワンストップで提供する独立系ITサービス企業です。グループはコンサル部門と受託開発部門を中心に約600名体制で、上流の業務改革からシステム実装・運用までを一気通貫で支援することを強みとしています。2021年の設立ながら積極的なM&Aで事業基盤を拡大し、2023年のIPO後もクラウドエンジニアの採用と地方拠点の新設を加速。顧客の製造DX需要を取り込み、売上の約70%をエンタープライズ領域が占める点が特徴です。
財務状況

2025年3月期末時点の主要指標は次のとおりです。
指標 | 数値 | 備考 |
---|---|---|
総資産 | 47億1,239万円 | 前期比+33% |
自己資本 | 34億889万円 | 自己資本比率72.3% |
有利子負債 | 1億円 | 実質無借金 |
ネットキャッシュ | 17億3,300万円 | — |
流動比率 | 320%前後 | 高水準の流動性 |
資本金 | 1億3,071万円 | 第三者割当増資後 |
ROE | 42.06% | 高い資本効率 |
ROA | 30.43% | — |
貸借対照表分析
項目 | 数値 | 補足 |
現金および預金 | 18億3,300万円 | 資産の38.9% |
利益剰余金 | 32億4,696万円 | 純資産の95% |
有利子負債比率 | 2.9% | 財務安全性は極めて良好 |
無形資産(ソフトウエア等) | 総資産の5%未満 | 減損リスクは限定的 |
財務健全性指標
指標 | 値 | 補足 |
D/Eレシオ | 0.03倍 | — |
ネットD/Eレシオ | ▲0.51倍 | ネットキャッシュ |
インタレスト・カバレッジ比率 | 100倍超 | — |
資本構成評価
株主資本72%、負債28%と保守的な構成です。さらなる成長投資余力が大きい一方、過大な自己資本はROE低下リスクにつながるため、今後は自社株買いまたは配当拡充の余地があると評価します。
キャッシュフローと運転資本

指標 | 2025年3月期実績 | 前期比・増減 | 備考 |
営業CF | 13億7,172万円 | +18.8% | 本業由来のキャッシュ |
投資CF | ▲1億8,024万円 | — | 主に設備投資 |
フリーCF | 11億9,100万円 | 黒字転換 | 営業CF+投資CF |
財務CF | ▲1億8,701万円 | — | 配当60円/株の支払 |
売上債権回転期間 | 1.57か月 | — | 高い現金化速度 |
運転資本 | 14億9,000万円 | — | 軽量なWC構造 |
将来フリーCF(2027年予想) | 17億円 | — | 売上成長8%、営業CFマージン13%前提 |
高いキャッシュ創出力と軽量な運転資本構造により、成長投資と株主還元を同時に実現できる余力を維持しています。
収益性と効率性

指標 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 傾向 |
売上総利益率 | 33.5% | 34.0% | 33.5% | 横ばい |
営業利益率 | 17.0% | 18.8% | 19.6% | 改善 |
純利益率 | 12.1% | 12.1% | 13.6% | 上昇 |
ROE | 51.3% | 42.1% | — | 自己資本増で低下も依然高水準 |
ROIC | — | — | 34.7% | WACCを大きく上回る |
セグメント別開示はありません(単一セグメント扱い)が、高付加価値のコンサル案件が増え、単価上昇が利益率改善の主因です。
業界動向

国内SI市場は年率4〜5%成長にとどまる一方、クラウド・DX領域は年率10%超で拡大しています。大手クライアントはレガシー基幹システムの再構築を急いでおり、中堅・独立系ベンダーにも大型案件が波及中です。主な競合はフューチャー、SHIFT、豆蔵K2TOPなど。豆蔵デジタルHDの売上成長率(年+10%)と営業利益率(19.6%)はいずれも業界平均(+6%、10%)を大きく上回っており、PBR8.31倍はROEを考慮すれば妥当と判断します。
事業リスク

- 人材リスク:エンジニア採用難と人件費高騰により成長鈍化の可能性あり。
- 顧客集中リスク:大口顧客案件(売上依存度10%以上)が遅延・減額となれば業績ブレに直結。
- バリュエーションリスク:PER19.8倍と市場平均を上回り、業績上振れを織り込む水準。
将来の成長戦略

会社は2028年3月期までに売上200億円、営業利益率20%以上を掲げています。M&Aを年間2社ペースで実施し、クラウド運用・セキュリティ分野を補完予定。現行の営業CF水準とネットキャッシュを考慮すると、最大20億円規模の買収余力があり、計画達成可能性は高いとみられます。AI生成モデルの開発受託やSaaS連携サービスへの横展開によるARPU向上も期待でき、保守運用ストック売上比率を現行30%から40%へ高めるシナリオが有力です。
まとめ

私ならこうする
株価は上場来高値圏ですが、ネットキャッシュと高いCF創出力を考えると中長期では依然割安感があります。短期では決算発表前の押し目を待ち、長期ではクラウド移行需要の拡大とM&Aシナジーを見込み、じっくり保有するスタンスを推奨します。
投資推奨
- 短期(1か月以内):6/10
- 長期(1年以上):8/10
投資判断の根拠
- 営業利益率19.6%・ROIC34.7%と高い収益性。
- 自己資本比率72%・ネットキャッシュ17億円の盤石な財務。
- DX市場成長+M&A戦略による年10%超の売上成長見通し。
リスク要因
- 人材確保難による成長鈍化・人件費上昇。
- 大口顧客案件の遅延・減額による業績ブレ。
投資タイミング
- 買い時:PER18倍台(株価1,600円近辺)で押し目があれば積極買い。ネットキャッシュ控除後の実質PERは15倍相当で割安。
- 売り時:PER25倍(株価2,200円超)到達時は利益確定。成長シナリオに過度な楽観が織り込まれる水準。
参考サイト
「投資にはリスクが伴います。本記事の内容は情報提供を目的としており、特定の投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。」
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