企業概要
日本アビオニクスはNECグループに属する電子機器メーカーです。赤外線サーモグラフィや微細接合装置などの電子機器と、防衛通信・航空管制向け情報システムを両輪に事業を展開しています。赤外線カメラは国内トップシェア級で、防衛省向け部材や産業設備の予兆保全需要が追い風になっています。2025年3月期時点の従業員数は約1,300名。海外売上比率は2割弱とまだ低いものの、北米・アジアでの販路開拓を急いでいます。売上構成は情報システム79%、電子機器21%。政府の防衛費拡大と官公庁のシステム更新需要が成長ドライバーです。
財務状況

2025 年 3 月期通期と、最新の 2026 年 3 月期第 1 四半期(1Q)を比較した主要指標は次のとおりです。
指標 | 2025/03 通期 | 2026/03 1Q | 増減 |
---|---|---|---|
総資産 | 269 億 1,300 万円 | 269 億 40 百万円 | +26 百万円 |
株主資本 | 116 億 4,600 万円 | 142 億 40 百万円 | +25 億 7,600 万円 |
自己資本比率 | 43.0 % | 52.9 % | +9.9 pt |
現預金 | 23 億 4,100 万円 | 11 億 19 百万円 | ▲12 億 2,900 万円 |
有利子負債 | 47 億 9,000 万円 | 58 億円 | +10 億 1,000 万円 |
受注残高 | 217 億 52 百万円 | 343 億 39 百万円 | +125 億 87 百万円 |
1Q ハイライト
- 売上高 50 億 37 百万円(前年同期比 +23.2 %)
- 営業利益 5 億 82 百万円(+79.1 %)/経常利益 5 億 63 百万円(+82.8 %)
- 親会社株主に帰属する四半期純利益 3 億 88 百万円(+103.0 %)
- 受注高 176 億 24 百万円で年間計画を大きく上回る高進捗
貸借対照表の推移
指標 | 最新値またはレンジ | 備考 |
総資産 | 260〜275 億円 | 2021/03 以降横ばい |
株主資本 | 過去 4 年で 60 %増 | 1Q でさらに積み増し |
自己資本比率 | 40 %台後半 → 52.9 % | 改善トレンド継続 |
ネット D/E レシオ | 0.21 倍 | 保守的 |
財務健全性
指標 | 数値 | 評価 |
自己資本比率 | 52.9 % | 安全圏内 |
インタレストカバレッジ | 15 倍 | 良好 |
固定長期適合率 | 71 % | 良好 |
キャッシュフローと運転資本

通期の営業 CF は 21 億 5,000 万円、投資 CF は ▲4 億 7,100 万円でフリー CF は 16 億 7,900 万円。1Q の CF 計算書は未開示ですが、現預金の減少は前受金消化や棚卸増による運転資金需要に伴うものと推定されます。
区分 | 2025/03 通期 | 補足 |
営業 CF | 21 億 5,000 万円 | 過去最高(前受金増) |
投資 CF | ▲4 億 7,100 万円 | 設備投資中心 |
フリー CF | 16 億 7,900 万円 | 黒字維持 |
財務 CF | ▲20 億 8,500 万円 | 自己株取得・借入返済 |
運転資本効率
運転資本効率 | 数値 | 業界平均比 |
売上債権回転期間 | 98 日 | 同程度 |
棚卸資産回転期間 | 55 日 | 同程度 |
収益性と効率性

通期ベースの利益率推移は次のとおりです。
指標 | 2025/03 通期 | 備考 |
売上総利益率 | 31.4 % | 改善傾向 |
営業利益率 | 13.9 % | 過去 5 年で最高 |
純利益率 | 9.8 % | 過去 5 年で最高 |
資本効率
指標 | 2025/03 通期 | 過去 5 年平均比 |
ROE | 16.9 % | 上回る |
ROA | 7.3 % | 上回る |
ROIC | 11.2 % | 上回る |
1Q 実績を年換算すると、営業利益率は約 11.6 %、ROE は通期目標を上回るペースで推移しています。
セグメント別収益性(2026/03 1Q)
セグメント | 売上高 | 前年同 Q 比 | 営業利益 | 営業利益率 |
情報システム | 40 億 19 百万円 | +20.3 % | 5 億 54 百万円 | 13.8 % |
電子機器 | 10 億 17 百万円 | +36.5 % | 27 百万円 | 2.7 % |
業界動向

国内防衛関連市場は政府の防衛費増額方針を背景に年率 4 %超で拡大しています。空港の更新需要も旺盛で、航空管制設備更新案件が相次ぎます。一方、電子機器分野は中国景気減速や半導体在庫調整で産業用需要が弱含みです。競合は赤外線では三菱電機、情報システムでは富士通や NEC などが存在しますが、同社はカスタム開発と実績でシェアを確保しています。1Q の売上高営業利益率 11.6 % は業界平均 8 % を大きく上回り、競争優位性をさらに裏づけました。
事業リスク

- 主力案件の納期集中による四半期業績の変動
- 防衛関連比率が高いため政策変更の影響を受けやすい
- 電子機器部門の黒字化遅延リスク
将来の成長戦略

会社計画(2026/03 期)は売上 225 億円・営業利益 32 億円を掲げています。1Q 時点で売上進捗率 22.4 %、営業利益進捗率 18.2 % と概ね計画線上です。情報システム部門ではクラウド管理サービスや AI 画像解析ソリューションを重点投資領域とし、営業利益率 15 % 超維持を狙います。電子機器部門は医療・バイオ向け微細接合市場開拓で黒字化を目指し、受注残の積み上がりが追い風です。
まとめ

私ならこうする
情報システム事業の高収益が続く限り強気姿勢を維持します。短期では高進捗を好感した株価上昇後の押し目を拾い、中長期では防衛関連需要のピークアウトを見極めて一部利益確定を検討します。
投資推奨(10段階)
- 短期:7/10
- 長期:8/10
投資判断の根拠
- 1Q で売上高 +23 %、営業利益 +79 % と大幅成長
- 自己資本比率 52.9 % と財務余力が厚く増配余地大
- 防衛費拡大による受注残高の積み上がり
リスク要因
- 防衛関連予算配分の変動
- 電子機器部門の黒字化遅延
投資タイミング
- 買い時 1Q 決算発表後に短期調整し PER 25 倍付近まで下押した局面
- 売り時 情報システム受注が前年割れ、営業利益率が 15 % を下回った場合
参考サイト
投資にはリスクが伴います。本記事の内容は情報提供を目的としており、特定の投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
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