企業概要
日本アビオニクスはNECグループに属する電子機器メーカーです。赤外線サーモグラフィや微細接合装置などの電子機器と、防衛通信・航空管制向け情報システムを両輪に事業を展開しています。赤外線カメラは国内トップシェア級で、防衛省向け部材や産業設備の予兆保全需要が追い風になっています。2025年3月期時点の従業員数は約1,300名。海外売上比率は2割弱とまだ低いものの、北米・アジアでの販路開拓を急いでいます。売上構成は情報システム79%、電子機器21%。政府の防衛費拡大と官公庁のシステム更新需要が成長ドライバーです。
財務状況

直近決算(2025年3月期)の主要財務指標は次のとおりです。
指標 | 数値 | 前期比 |
---|---|---|
総資産 | 269億1,300万円 | ▲2.2% |
株主資本 | 116億4,600万円 | ▲1.0% |
自己資本比率 | 43% | ▲9pt |
有利子負債 | 47億9,000万円 | ― |
エクイティ比 | 41% | 改善 |
利益剰余金 | 77億8,400万円 | +31.5% |
現預金 | 23億4,100万円 | ― |
短期借入金 | 28億3,000万円 | ― |
PBR | 4.37倍 | ― |
財務レバレッジは高水準ですが、安全圏内の自己資本比率と利益剰余金の大幅増により、株式市場からは成長期待が織り込まれています。
貸借対照表主要項目推移
指標 | 最新値またはレンジ | 備考 |
総資産 | 260~275億円 | 2021/03以降ほぼ横ばい |
株主資本 | 60%増(過去4年累計) | ― |
自己資本比率 | 40%台後半 | 安定維持 |
ネットD/Eレシオ | 0.21倍 | 保守的 |
財務健全性指標
指標 | 数値 | 評価 |
自己資本比率 | 43% | 安全圏内 |
インタレストカバレッジ | 15倍 | 良好 |
固定長期適合率 | 71% | 良好 |
資本構成評価
過剰な借入依存はなく、ROE向上と配当拡充に資本を振り向けられる余地があります。
キャッシュフローと運転資本

キャッシュフローの概要は以下のとおりです。
区分 | 金額 | 前期比・補足 |
営業CF | 21億5,000万円 | 過去最高(前受金増加) |
投資CF | ▲4億7,100万円 | 設備投資が中心 |
フリーCF | 16億7,900万円 | 黒字維持 |
財務CF | ▲20億8,500万円 | 自己株取得・借入返済 |
期末現金残高 | 微減 | ― |
運転資本効率
指標 | 数値 | 業界平均比 |
売上債権回転期間 | 98日 | 同程度 |
棚卸資産回転期間 | 55日 | 同程度 |
営業CFの高水準が続けば、有利子負債削減と株主還元の両立が可能です。
収益性と効率性

利益率推移
指標 | 2025/03期 | 備考 |
売上総利益率 | 31.4% | 上昇傾向 |
営業利益率 | 13.9% | 上昇傾向 |
純利益率 | 9.8% | 上昇傾向 |
資本効率
指標 | 2025/03期 | 過去5年平均比 |
ROE | 16.9% | 上回る |
ROA | 7.3% | 上回る |
ROIC | 11.2% | 上回る |
セグメント別収益性
セグメント | 売上高 | 前年比 | 営業利益(損失) | 営業利益率 |
電子機器 | 40億9,000万円 | +20.7% | ▲2億5,000万円 | ― |
情報システム | 160億円 | +9.3% | 30億5,000万円 | 19% |
高利益率の情報システム事業が全社利益の106%を稼ぎ、電子機器部門の赤字を補っています。
業界動向

国内防衛関連市場は政府の防衛費増額方針を背景に年率4%以上で拡大しています。航空管制設備の更新需要も旺盛です。一方、電子機器分野は中国景気減速や半導体在庫調整の影響で産業用需要が弱含みです。競合は赤外線で三菱電機、情報システムで富士通やNECが存在しますが、同社は小回りの利くカスタム開発と実績でシェアを維持しています。売上高営業利益率13.9%は業界平均8%を大幅に上回り、競争優位性を示しています。
事業リスク

主力案件の納期集中により四半期業績が変動しやすい点がリスクです。また防衛関連比率が高いため政策変更の影響を受けやすく、輸出規制強化が収益機会を制限する可能性があります。電子機器部門の構造改革停滞も損益を圧迫しかねません。さらに高PBR水準による株価変動リスクにも注意が必要です。
将来の成長戦略

会社計画では2026年3月期に売上225億円、営業利益30億円を目標としています。情報システム分野ではクラウド管理サービスとAI画像解析ソリューションを重点投資領域とし、営業利益率15%以上の維持を掲げています。電子機器分野は医療・バイオ向け微細接合市場を開拓し、黒字化を狙います。防衛費拡大と老朽インフラ更新の追い風を受け、中期的に年率5%成長シナリオが現実的です。フリーCFが継続的に創出されれば、株主還元強化やM&Aによる非防衛ビジネス拡張も視野に入ります。
まとめ

私ならこうする
情報システム事業の高収益が続く限り強気姿勢を維持します。ただし電子機器部門の赤字が長期化する場合は上値が重くなりやすいため、決算発表でセグメント別損益を毎期チェックします。短期では出来高急増時の押し目を拾い、中長期では防衛需要のピークアウトを見極めて一部利益確定する戦略を取ります。
投資推奨(10段階)
- 短期:7/10
- 長期:8/10
投資判断の根拠
- 情報システム事業の営業利益率19%と高収益が継続
- 自己資本比率43%で財務余力があり増配余地が大きい
- 防衛費増額による受注拡大で売上成長が見込める
リスク要因
- 防衛関連予算配分変動による受注減少の可能性
- 電子機器部門の赤字継続による企業価値毀損
投資タイミング
- 買い時 決算発表後に株価調整しPER25倍付近まで低下した局面
- 売り時 情報システム受注が前年割れとなり営業利益率が15%を下回った場合
投資にはリスクが伴います。本記事の内容は情報提供を目的としており、特定の投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
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