要点サマリー
- 2025年7月期は売上61.5億円、営業利益27.4億円、純利益18.7億円で高収益を維持。営業利益率は44.6%。
- 期末の自己資本比率46.5%、ネットキャッシュ+32.7億円と財務は健全。流動比率は約194%。
- 来期(2026年7月期)は営業減益予想ながら、調整力(蓄電池)投資とPF拡張で中期の成長シナリオは維持。
- 短期は中立(5/10)、長期は買い寄り(8/10)の評価。
企業概要
デジタルグリッド株式会社(証券コード:350A)は、電力自由化と脱炭素の進展を背景に、電力市場の取引・需給調整を最適化するSaaS型プラットフォームを提供しています。主力は電力プラットフォーム事業と再エネプラットフォーム事業で、取引の自動化、需給予測、可視化UIなどを通じてコスト削減と安定運用に寄与します。2025年5月には第三者割当増資を実施し、成長投資余力を確保しました。
財務状況

2025年7月期は連結決算初年度です。期末の財政状態は以下のとおりで、自己資本比率は46.5%、現金同等物は46.5億円と厚めの手元資金を確保しています。
指標 | 2025年7月期実績 | 補足 |
---|---|---|
総資産 | 178.2億円 | - |
純資産 | 82.8億円 | 自己資本比率46.5% |
流動資産 | 165.3億円 | 現金及び預金46.5億円、未収入金97.7億円など |
流動負債 | 85.4億円 | 未払金54.0億円、未払法人税等8.1億円など |
固定負債 | 10.0億円 | 長期借入金10.0億円 |
有利子負債合計 | 13.8億円 | 短期0.26億円+1年内返済3.54億円+長期9.99億円 |
ネットキャッシュ | +32.7億円 | 現金46.5億円-有利子負債13.8億円 |
1株当たり純資産 | 1,281.84円 | - |
財務健全性の評価
- 自己資本比率46.5%、D/Eレシオ約0.17倍と保守的。ネットキャッシュ+32.7億円で外部環境の変動に耐性があります。
- 流動比率は約194%で、短期支払い能力に余裕があります。
キャッシュフローと運転資本

2025年7月期のキャッシュフローは、営業CF+3.21億円、フリーCF+1.40億円で黒字着地。売上拡大に伴い未収入金が+47.5億円増加して運転資本は膨らみましたが、期末現金46.48億円で流動性は確保されています。
指標 | 金額 | コメント |
営業CF | +3.21億円 | 未収入金増加▲47.5億円等の逆風下でも営業黒字を確保 |
投資CF | ▲1.81億円 | 設備・投資有価証券など |
フリーCF | +1.40億円 | 営業CF+投資CF |
財務CF | +5.29億円 | 新株発行+21.79億円、短期借入金純減▲26.69億円等 |
期末現金等 | 46.48億円 | 手元流動性は厚め |
運転資本の評価
- 増収に伴い売上債権が積み上がる一方、未払金の増加が一部相殺。キャッシュ創出力は維持されています。
収益性と効率性

2025年7月期(連結)は高い粗利率と営業利益率を維持。プラットフォーム手数料収入の伸長が採算改善に寄与しました。
指標 | 数値 | コメント |
売上高 | 61.54億円 | - |
売上総利益 | 45.80億円 | 粗利率約74.5% |
営業利益 | 27.43億円 | 営業利益率44.6% |
経常利益 | 26.14億円 | 収益性は高水準 |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 18.70億円 | 純利益率約30.4% |
ROE | 22.6% | 高い資本効率 |
EPS | 308.73円 | 株式分割後換算 |
セグメント別の収益性
セグメント | 売上高 | セグメント利益 |
電力PF事業 | 54.20億円 | 35.30億円 |
再エネPF事業 | 4.49億円 | 1.20億円 |
その他(調整力等) | 2.84億円 | ▲2.46億円 |
収益構造のポイント
- DGP手数料収益は47.92億円と収益の柱。
- 「顧客との契約以外の源泉からの収益」7.88億円が上乗せされ、全体の採算を押し上げました。
業界動向

再生可能エネルギー導入拡大と市場制度の高度化が進む中、需給調整・取引最適化を担う中立PFの価値は上昇しています。競合は存在するものの、SaaS型でスケーラブルな同社のモデルは高い収益率を裏付ける差別化要因です。
事業リスク

- 売上債権・未収入金の増加に伴う運転資本負担と回収タイミング。
- 来期は営業減益予想で、期待先行のバリュエーション調整リスク。
- 政策・市場制度変更の影響を受けやすい産業特性。
将来の成長

会社は中期にROE20%+、営業利益率40%+、取扱電力量CAGR30%+を掲げ、調整力事業(蓄電池)に累計100億円の投資計画です。2026年7月期は売上62.81億円(+2.1%)、営業利益23.63億円(▲13.8%)、純利益14.76億円(▲21.0%)を見込みます。2025年11月1日には1→6の株式分割(10/31基準日)を予定し、流動性の向上が見込まれます。
注目テーマ
- 電力PFの契約容量拡大と市場ポジション強化
- 再エネPFの制度転換対応と安定収益化
- 蓄電池を中核とした調整力事業の本格拡大
まとめ

私ならこうする
短期は決算後の需給と来期ガイダンス(営業減益)を織り込む局面で、押し目待ちに徹します。中期は高い利益率×健全財務(ネットキャッシュ)を評価し、段階的な買い増しで臨みます。
投資推奨
- 短期投資(1か月以内):5/10(中立)
- 長期投資(1年以上):8/10(買い寄り)
投資判断の根拠(最大3点)
- 営業利益率44.6%・ROE22.6%と高収益・高効率
- ネットキャッシュ+32.7億円で外部環境耐性が高い
- 中期目標と調整力投資で成長シナリオが明確
リスク要因(最大2点)
- 売上債権増による運転資本負担・回収遅延
- 来期営業減益に伴うバリュエーション調整
投資タイミング
- 買い時:需給悪化によるスパイク安、または25日移動平均線近辺で出来高収縮→反発確認
- 売り時:ガイダンス下振れや運転資本の恒常的悪化でフリーCFが赤字化する局面
参考サイト
「投資にはリスクが伴います。本記事の内容は情報提供を目的としており、特定の投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。」
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