企業概要
ブレインパッド(3655)は、データ分析とAIソリューションを軸に、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するIT企業です。2004年設立、2011年に東証マザーズ上場(現グロース市場)を果たし、AI・機械学習・データマイニングなどを活用した戦略立案や業務改善に強みを持っています。主力事業は、企業向けにデータ活用のコンサルティングを提供する「プロフェッショナルサービス事業」と、自社製品をクラウド等で提供する「プロダクト事業」に大別されます。
マーケティング領域では大手小売業向けに購買データを基にした販売戦略の高度化支援、金融業界向けには不正検知やリスク評価モデルの構築、製造業では設備異常検知などの予兆保全システム導入など、各業界における幅広い実績があります。
財務状況

直近実績は2025年6月期で売上高118億円 営業利益15.8億円 経常利益16.3億円 親会社株主に帰属する当期純利益10.7億円です。営業利益率は18.44パーセント 純利益率は13.38パーセントで前年から改善しました。自己資本比率は34.57パーセントと安定水準です。時価総額は約318.7億円 予想PER25.96倍 PBR5.18倍 予想配当利回り0.56パーセントです 価格は2025年8月8日終値1446円です。
貸借対照表の主要項目の推移とポイント
- 自己資本比率は2023年33.17パーセント 2024年31.77パーセント 2025年34.57パーセントと持ち直しています
- 純資産は約64億円規模で増加傾向です PBR5倍台と株主資本に対する市場評価は高めです
- 現金及び預金は約33.96億円と潤沢です 固定資産の増加は限定的で資産の多くは流動性の高い項目です
財務健全性指標の計算と解釈
- ネットキャッシュに近い保守的構成で短期の資金繰り耐性は高いです
- 実質的なレバレッジは低く金利上昇耐性は高いです
- PERは25倍台と成長株のレンジに位置し資本コストを上回る収益性を市場が織り込んでいます
資本構成の適切性の評価
- 株主資本中心の構成で財務リスクは低位です 成長投資を原資とする内部留保の積み増しと株主還元の両立が可能なバランスと評価します
キャッシュフローと運転資本

キャッシュフロー概況
- 営業CF13.50億円 投資CFマイナス4.39億円 財務CFマイナス8.70億円 フリーCF9.11億円 現金等33.96億円です
- 営業CFマージンは約11.4パーセントで安定的です
詳細分解の着眼点
- 営業CFは利益水準の向上と運転資本の適正化で底堅いです
- 投資CFは開発投資と設備投資が中心で規模は売上の数パーセントに収まります
- 財務CFは配当や人材採用関連の資金手当て 自己株や借入返済などが主因とみられます
運転資本の効率性
- 在庫負担の小さいビジネスで売掛金管理が鍵です 過度な増加は見られず資金回収は適正です
- 入金サイトの最適化と継続課金比率の上昇がCFOの安定化に寄与します
フリーキャッシュフローの算出と将来予測
- 実績FCF9.1億円 会社計画の売上135億円 営業利益17.5億円が実現する前提で 営業CFマージンを11から12パーセント程度と仮定すると 来期FCFは8から10億円レンジを見込みます
収益性と効率性

利益率の推移
- 売上総利益率は49.77パーセント 営業利益率は18.44パーセント 経常利益率は14.14パーセント 純利益率は13.38パーセントです
- 前年は売上総利益率42.25パーセント 営業利益率16.43パーセント 純利益率12.77パーセントで 今期は一段の改善です
資本効率の評価
- 概算ROEは約17パーセント 純利益10.7億円と純資産約64億円から算出
- 概算ROAは約6パーセント 総資産を自己資本比率から逆算し算定
- ROICは開示上の正確な投下資本が取得困難なため参考評価に留めますが FCFマージン約7.7パーセントと高水準で資本効率は良好です
セグメント別の収益性
- プロフェッショナルサービスが売上の過半を占める一方 プロダクトは継続課金で利益貢献度が高い構造です 今期は両輪での伸長により全社マージンが改善しました
業界動向

国内では生成AIとデータ利活用の本格導入が加速し 需要は金融小売製造を中心に底堅いです 上流の戦略設計と運用までの一気通貫支援へのニーズが強まっています 既存SIは人月型で利益率が伸びにくい中 データ活用特化型は高付加価値で単価が底上げされやすいです 一方で人材獲得競争は激化し 採用と育成のコストは上昇傾向です 生成AIの商用適用範囲拡大に伴い プライバシーセキュリティガバナンス要件が高度化し 体制と知見を持つ企業に仕事が集中します 市場は案件の大型化と長期化が進み 継続課金モデルの比率拡大が評価されやすい環境です
市場環境と競争
- 外資系大手や総合コンサルが競合ですが データ実装力と内製化支援の実績に差別化余地があります
- 価格競争よりも成果連動とナレッジ再利用での生産性向上が勝敗を分けます
市場シェアと競争力
- 国内のデータ活用専業として知名度と人材集積で優位です 顧客の継続率向上とプロダクト併売が収益性の源泉です
業界平均との比較
- 同業のITサービスは営業利益率が一桁台に留まりやすいところ 同社は今期18パーセント台と高水準です
事業リスク

リスク概要
- 人材採用と定着の難易度が高く 単価人件費の上昇が利益を圧迫し得ます
- 大型案件の計画変更に伴うパイプライン変動が四半期業績の振れを大きくします
- 生成AIの規制やガバナンス要件強化に対する投資負担が発生します
財務リスクの定量評価
- 自己資本比率34.57パーセント 現金等約33.96億円で短期支払能力は高いです
- PBR5倍台と期待水準が高く 失望時のバリュエーション調整リスクがあります
事業継続性
- 継続課金比率の上昇と顧客基盤の分散で安定度は上がっていますが 依然として採用と育成の投資が成長速度を左右します
市場環境変化の影響度
- 景気後退時は新規投資の先送りが生じやすく 受注のタイミングが変動します 一方でコスト削減型のAI適用は逆風下でも一定需要があります
将来の成長

成長性の概要
- 会社計画は2026年6月期に売上135億円 営業利益17.5億円 純利益11.5億円です 増収率は約14パーセント 営業利益の伸びは約11パーセントで 利益率は約20パーセントを見込みます
中期計画の実現可能性
- プロダクト比率の上昇とナレッジ再利用による稼働効率の改善で到達可能と見ます 採用と育成が計画通りに進むかが最大の前提です
新規事業と投資計画の収益性
- 生成AIを用いた運用自動化 テスト自動化 需要予測などは短期の費用対効果が明確で パイプラインの厚みにつながります 追加投資は売上数パーセントの水準で吸収可能です
市場環境を踏まえた成長シナリオ
- ベースシナリオ 売上高年率10から15パーセント 営業利益率18から20パーセントを維持
- ブルシナリオ プロダクトの拡大で売上年率20パーセント弱 営業利益率20パーセント超
- ベアシナリオ 採用停滞と大型案件の遅延で成長一桁台 営業利益率15パーセント前後
投資判断

私ならこうする
短期は様子見に切り替えます。1280〜1300円でのヨコ固めと5日移動平均線の明確な回復を確認してから、少量ずつ分割で入ります。戻りは1390〜1450円で一部利益確定を優先します。終値ベースで1260円割れが2日続いた場合は需給悪化と判断し、ポジションを縮小します。中長期はFCF体質と高い利益率を評価し、四半期ごとに受注と利益率のモメンタムを点検しながらウエイト調整します。
投資推奨
短期一か月以内 4点 慎重
長期一年以上 7点 やや強気
投資判断の根拠
- 2025年6月期は売上118億円 営業利益率18.44パーセントと改善が続いている
- FCF約9.1億円 現金等約33.96億円で投資余力と耐性が高い
- 2026年計画 売上135億円 営業利益17.5億円と増収増益を会社が明示
リスク要因
- 人材獲得競争による採用単価上昇と離職の増加
- 案件の大型化に伴う受注時期のずれと四半期変動
投資タイミング
買い時 1280〜1300円での底固め確認後に分割で
売り時 1390〜1450円の戻りは利益確定優先
根拠 4Qの収益鈍化とコンセンサス未達で当面はリレーティング途中
参考サイト
投資にはリスクが伴います。本記事は情報提供を目的としており、特定の投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
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