企業概要
アルピコホールディングス(証券コード 297A)は、長野県を中心に運輸・観光・流通・不動産の4事業を垂直統合する地域密着型コングロマリットです。バス・鉄道などの公共交通を基盤に、ホテル、スキー場、スーパーマーケットまで幅広いサービスを提供し、地域経済と観光産業の両輪を支えています。近年は EV バス の導入や スマートステーション の整備を推進し、デジタルトランスフォーメーション(DX)と環境・社会・ガバナンス(ESG)投資を加速。観光需要の回復と地方創生の追い風を受け、持続的成長をめざしています。
2026年3月期 第1四半期決算ハイライト
指標 | 2026/03期 Q1 | 前年同期 | 前年同期比 |
---|---|---|---|
営業収益 | 255.7 億円 | 247.7 億円 | +3.2% |
営業利益 | 7.08 億円 | 6.34 億円 | +11.7% |
経常利益 | 6.47 億円 | 5.77 億円 | +12.1% |
親会社株主に帰属する純利益 | 3.96 億円 | 6.55 億円 | ▲39.5% |
自己資本比率 | 26.1% | 24.9%(2025/3 期末) | +1.2pt |
- 増収・営業増益:流通・観光・運輸の回復が牽引。
- 純利益減少:利息負担と税負担の増加が影響。
- 財務健全性向上:有利子負債を圧縮し自己資本比率が改善。
- 通期計画据え置き:売上高 1,055 億円、営業利益 31 億円、純利益 15 億円を維持。
財務状況(2025年3月期決算)

指標 | 2024/03期 | 2025/03期 | 前期比 |
営業収益 | 996 億円 | 1,038 億円 | +4.2% |
営業利益 | 24.5 億円 | 34.1 億円 | +39.3% |
当期純利益 | 9.0 億円 | 22.9 億円 | +153.5% |
EPS | 15.05 円 | 36.35 円 | +141.4% |
自己資本比率 | 18.0% | 24.9% | +6.9pt |
有利子負債 | 278 億円 | 238 億円 | ▲40 億円 |
財務体質は着実に強化されており、PER 10.4 倍・PBR 1.08 倍 と依然割安水準です。復配(年間 5 円)により配当利回りは 2% 台前半へ上昇しました。
キャッシュフローと運転資本

区分 | 2024/03期 | 2025/03期 |
営業CF | 25.0 億円 | 25.4 億円 |
投資CF | ▲19.6 億円 | ▲19.6 億円 |
財務CF | 18.1 億円 | 1.8 億円 |
フリーCF | 5.4 億円 | 5.8 億円 |
営業キャッシュフローの安定により、フリー CF は 2 期連続で黒字を確保。有利子負債の削減と相まって、ネット・デット/EBITDA は 6.2 倍 → 4.8 倍 に低下しました。
収益性と効率性

指標 | 2022/03期 | 2023/03期 | 2024/03期 | 2025/03期 |
売上総利益率 | 18.1% | 18.7% | 19.0% | 19.3% |
営業利益率 | ▲1.8% | 0.6% | 2.4% | 3.3% |
純利益率 | ▲0.7% | 0.1% | 0.9% | 2.2% |
ROE | ▲10.7% | 0.7% | 7.4% | 15.8% |
ROA | ▲1.8% | 0.1% | 0.7% | 3.9% |
- 流通部門 が安定収益源として全社利益を底上げ。
- 運輸・観光部門 はインバウンド回復と燃料費最適化で黒字化。
- 不動産部門 は減益ながら収益分散に寄与。
業界動向

政府の地方創生・観光促進策により、インバウンドは月間 300 万人規模まで回復しました。燃料価格高騰や人件費上昇の逆風は続くものの、同社は 運賃改定 と 商品価格の適正化 で影響を吸収。EV バス導入や再エネ活用による ESG 対応は補助金も活用でき、競合優位性を高めています。また、地域連携型 MaaS(Mobility as a Service) の実証が進み、交通・観光・流通を横断するサービス統合が差別化要因となります。
事業リスク

- 地方人口減少 に伴う長期需要の縮小
- 燃料・電力コストの高止まり と 人材不足
- 観光需要が 感染症・国際情勢 など外的要因で変動
公共交通事業は行政支援に左右されやすく、政策動向にも注意が必要です。
将来の成長

同社の中期経営計画(2024~2026 年度)は、最終年度に 売上高 1,055 億円・営業利益 31 億円 を目標としています。初年度 1Q の営業利益進捗率は 31% と順調な滑り出しです。
- モビリティ:EV バス 200 台体制、スマートステーション拡充
- リテール:スマートストア 10 店舗、セルフレジと AI 需要予測を導入
- 観光:新ホテル 2 棟開業、スキー場に AI 需要予測を導入し客単価を向上
これら施策が計画通り進めば、営業利益率はさらに +1pt 改善する見通しです。
投資判断まとめ

私ならこうする
黒字転換と財務改善が鮮明になった今こそ仕込み時と判断します。コストインフレと人口減少の逆風はあるものの、多角化 と DX/ESG 投資 がリスクを緩和。株価は依然 PER 10 倍台と割安で、地方創生関連テーマが物色されれば上値余地は大きいでしょう。
- 投資推奨
- 短期投資:6/10
- 長期投資:8/10
- 投資判断の根拠
- 3 期連続の増収・増益とフリー CF 黒字
- 有利子負債削減と自己資本比率の改善
- DX/ESG 投資が中長期の成長ドライバー
- リスク要因
- 地方人口減少とコスト高
- 政策・観光需要に依存する事業構造
- 投資タイミング
- 買い時:220 円前後(PER 10 倍・PBR 1.0 倍)
- 売り時:中期計画を上振れし PER 15 倍水準(330 円前後)に到達したとき
参考サイト
「投資にはリスクが伴います。本記事の内容は情報提供を目的としており、特定の投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。」
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