企業概要
三菱重工業は日本を代表するエンジニアリング総合メーカーです。航空・防衛・宇宙、物流・冷熱・ドライブシステム、プラント・インフラ、エナジーなど五つの事業分野を展開し、火力発電設備から潜水艦、水素混焼ガスタービンまで幅広い製品を手掛けています。2025年3月期の売上収益は5兆0271億円、従業員数は約78,000人。政府の防衛費増額、脱炭素化に伴うエネルギー転換、インフラ老朽化更新需要が同社の成長ドライバーです。一方、プロジェクトの大型化・複雑化と為替変動が収益ボラティリティの主因となります。
財務状況

| 指標 | 数値 | 前年比・補足 |
|---|---|---|
| 総資産 | 6兆6,589億円 | +6.4% |
| 親会社株主持分 | 2兆3,467億円 | +4.6% |
| 自己資本比率 | 35.2% | 国内重工最大級 |
| 有利子負債 | 8,507億円 | – |
| D/Eレシオ | 0.36倍 | 改善継続 |
| 利益剰余金 | 1兆5,886億円 | +10.8% |
| 流動比率 | 約160% | 安全性高 |
資産拡大と自己資本積み上げで財務体質は着実に強化されています。
貸借対照表主要項目推移
| 項目 | 2021/03 | 2025/03 | 変化 |
| 総資産 | 4.81兆円 | 6.66兆円 | +38% |
| 自己資本比率 | 28.4% | 35.2% | +6.8pt |
| 有利子負債 | 7,909億円 | 8,507億円 | +598億円 |
財務健全性指標
- ネットD/Eレシオ 0.13倍(現金等5,358億円控除後)
- インタレストカバレッジ 17倍
短期・長期いずれの債務償還能力も極めて良好です。
資本構成の適切性
社債中心の長期固定負債が約7割を占め、金利上昇リスクは限定的です。自己株取得余力も十分残っており、株主還元の柔軟性が高い点が評価できます。
キャッシュフローと資金管理

| 指標 | 数値 | 補足 |
| 営業CF | 5,304億円 | +14% |
| 投資CF | ▲1,877億円 | 設備・研究投資 |
| 財務CF | ▲1,141億円 | 配当・債務返済 |
| フリーCF | 3,427億円 | 3期連続黒字 |
| 売上債権回転日数 | 55日 | 改善 |
| 棚卸資産回転日数 | 120日 | 改善 |
| 仕入債務回転日数 | 64日 | – |
| 運転資本回転期間 | 111日 | 短縮 |
| FCFマージン | 6.8% | 業界平均3%上回る |
資金効率向上により、大型案件の前倒し投資を自己資金で賄える体制が整っています。
収益性と市場評価

| 指標 | 2023/03 | 2025/03 | 補足 |
| 売上総利益率 | 18.5% | 20.3% | +1.8pt |
| 営業利益率 | 5.0% | 6.3% | +1.3pt |
| 純利益率 | 3.4% | 4.9% | +1.5pt |
| ROE | 9.2% | 11.1% | +1.9pt |
| ROA | 3.2% | 3.9% | +0.7pt |
| ROIC(税後) | 5.9% | 7.0% | WACC5%超 |
航空・防衛・宇宙の営業利益は前年比+62%、エナジーはガスタービン更改需要で+11%。物流・冷熱は為替逆風で小幅減益。全体ではROICがWACCを上回り、経済価値を創出しています。
業界動向と市場競争力

世界防衛費は2024年に2.1兆ドル(前年比+7%)と過去最高更新。日本も2027年度までに防衛費をGDP比2%へ引き上げる計画です。脱炭素の潮流で火力発電市場は縮小する一方、高効率GTCCや水素混焼タービンへの更新需要が台頭。競合のGE・シーメンスに対し、三菱重工業は長期メンテ契約と国内防衛インフラの強固な顧客基盤で優位性を保持します。
市場シェア
- 国内防衛装備シェア 55%
- 世界大型ガスタービンシェア 8%(4位)
潜水艦や大型船エンジンなど高付加価値ニッチ領域で競争優位が顕著です。
事業リスク

- 過去の大型プロジェクト(SpaceJet 等)で損失計上経験があり、契約管理リスクが残存
- 資材高騰が粗利を圧迫する可能性
- 地政学リスクによる輸出規制強化が業績を左右する可能性
財務リスク
ネットD/E 0.13倍と低水準で、流動性リスクは小さいです。固定利付債の平均残存期間は5.8年と長く、リファイナンス余裕があります。
事業継続性
受注残高は8.4兆円(売上高の約1.7年分)。政府・インフラ向けが中心で景気循環の影響を受けにくいビジネスモデルが強みです。
将来の成長

同社の2027年度中期経営計画は「売上6兆円・営業利益率8%」を掲げています。
- 防衛・宇宙事業 年率15%成長
- 水素ガスタービン・CCUS等によるエナジー脱炭素ビジネス拡大
- 民間航空エンジンMROへの注力で安定収益源構築
研究開発費は年2,700億円と過去最高水準を継続。水素混焼GTCCは2026年商用化予定で高い利幅が見込まれます。
まとめ

三菱重工業は、航空・防衛・宇宙、エナジー、プラント・インフラ、物流・冷熱などを手がける日本有数の総合エンジニアリングメーカーで、防衛装備やガスタービン発電設備、潜水艦、水素混焼タービンなど、高度な技術を要する領域で強みを持っています。政府の防衛費増額やエネルギー転換、インフラ更新需要といった政策・社会ニーズと事業ポートフォリオの相性が良く、中長期的な需要の下支えが期待できるポジションにあります。
財務面では、総資産と親会社株主持分が拡大する一方で、自己資本比率は35%台、ネットD/Eレシオは0.13倍と、重工メーカーとしては健全な水準です。営業キャッシュフローはプラスを維持し、3期連続でフリーキャッシュフロー黒字、インタレストカバレッジも高水準と、設備投資や研究開発、配当・債務返済を自前のキャッシュで賄える体制が整いつつあります。収益性も改善が続いており、営業利益率・ROE・ROAはいずれも上昇傾向で、ROICが資本コストを上回る水準まで回復している点は重要なポイントです。
一方で、大型プロジェクト特有のコスト超過リスクや、資材価格・為替・地政学リスクなど、収益ボラティリティの要因も残っています。とはいえ、政府・インフラ向け案件を中心とした約8兆円超の受注残と、防衛・脱炭素という中長期テーマに沿った研究開発・設備投資を継続していることから、今後は「防衛・エナジー・インフラ」を軸に、収益性を意識した成長をどこまで実現できるかが注目点と言えます。
参考サイト
投資にはリスクが伴います。本記事の内容は情報提供を目的としており、特定の投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。


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