企業概要
日本電信電話(NTT)は国内固定・移動通信、長距離・国際通信、データ通信、ICTソリューションを柱とする世界最大級の通信事業者です。固定網とモバイル網を垂直統合した総合ICT体制で国内約9,500万回線を保有し、人口カバー率は99%を超えます。AI活用によるネットワーク自動最適化やIOWN構想、6G研究、データセンター拡張を通じ、B2B2Xモデルへと収益源を多様化。海外ではNTT DATAとNTT Ltd.を核にシステム開発やマネージドサービスを展開し、ICT売上が連結売上の約25%を占めています。
財務状況

総資産は2025年3月期で30.1兆円、株主資本は10.2兆円、自己資本比率34%と堅実なバランスシートを維持しています。有利子負債11.2兆円に対し株主資本10.2兆円でD/Eレシオは約1.1倍。BPSは123.54円と着実に伸長し、ROE10.2%・ROA3.5%が示す通り、巨大資産を生かした効率経営が続いています。
貸借対照表のポイント
- 流動資産8.4兆円に対し流動負債8.9兆円で短期資金繰りに問題なし。
- 固定資産21.7兆円は通信インフラ投資の蓄積で、資本性負債への依存度を抑制。
- 有利子負債比率109%と歴史的低水準を維持。
財務健全性指標
指標 | 2025/3 | 評価 |
---|---|---|
自己資本比率 | 34% | 安定水準(30%超) |
D/Eレシオ | 1.1倍 | 適正 |
インタレスト・カバレッジ | 20倍超(推計) | 余裕 |
資本構成は長期社債を中心に、低利で分散した負債ポートフォリオが特徴です。
キャッシュフローと運転資本

営業キャッシュフローは2.36兆円、投資キャッシュフロー▲2.00兆円、財務キャッシュフロー▲0.34兆円でフリーキャッシュフロー(FCF)は0.36兆円を確保しています。設備投資は2.09兆円と高水準ながら、営業キャッシュフローマージン17%台を維持。運転資本回転日数は約30日と通信業界平均(40日弱)より短く、料金前受け構造がキャッシュ創出を下支えしています。
収益性と効率性

- 売上総利益率:34%→36%(21→25年度、上昇傾向)
- 営業利益率:18.3%→18.9%と高水準を維持。
- 当期純利益率:最新期7.2%と規模を考慮すれば優秀。
- ROE10%台、ROIC8%前後で資本コスト(約6%)を上回っています。
セグメント別ではモバイル(移動通信)が営業利益の約40%を稼ぎ、地域通信が約30%、データ通信(NTT DATA)が約20%。海外ICT事業は売上比25%・利益比15%と拡大中です。
業界動向

国内通信市場は人口減少に伴い回線数が頭打ちとなる一方、5Gトラフィックは年率20%増、2027年から6G投資が本格化する見通しです。競合はKDDI・ソフトバンク・楽天モバイル。楽天の基地局整備遅延により価格競争は一段落し品質競争へ移行。NTTは総務省によるNTT法見直しで海外投資自由度が高まり、データセンターや海底ケーブルなどインフラ輸出が追い風になります。
事業リスク

- 5G/6G設備投資の巨額化によるキャッシュフロー圧迫。
- 政府による料金規制強化とNTT法改正の方向性。
- 円安進行時のドル建て債務増加および海外M&Aリスク。
財務リスク面ではD/E1.1倍、固定比率72%で長期資金負担は管理可能です。
将来の成長戦略

中期計画(2024―2027年度)は「IOWN商用化・6G開発」と「海外DX売上年率10%成長」を掲げ、営業利益1.3兆円、ROE12%を目標としています。クラウド/データセンター投資は年5,000億円規模で北米・アジア太平洋地域の大型案件が寄与。国内では光回線クロスセルと法人DX支援でARPU上昇を狙います。海外ICTの営業利益率は現在8%前後ですが、10%超えへの改善でシナジー顕在化余地があります。
まとめ

私ならこうする
NTTはキャッシュが潤沢で配当利回り3%台、6GとIOWNで長期的に世界インフラの根幹を握る可能性が高いです。個人的には株価156円(7月8日終値)水準なら長期保有目的でコツコツ買い増します。短期では材料出尽くしの押し目を待ちますが、配当取りで下値も堅そうです。
投資推奨
期間 | 推奨度 |
短期(~1か月) | 6/10 |
長期(1年以上) | 8/10 |
投資判断の根拠
- 営業キャッシュフロー2.3兆円に支えられた高い配当余力。
- 自己資本比率34%とD/E1.1倍で財務健全。
- 6G・IOWN・海外DXで収益成長余地が明確。
リスク要因
- 6G投資前倒しによる資本効率低下。
- 政策変更による料金下げ圧力。
投資タイミング
- 買い時:配当利回り3.5%(目安株価140円近辺)到達時。
- 売り時:6G実証成功など好材料でPER20倍超に拡大した局面(目安株価200円超)。
投資にはリスクが伴います。本記事は情報提供を目的としており、特定の投資を推奨するものではありません。投資判断は自己責任で行ってください。
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