INPEX(1605)低PBR×高配当 2025/5最新決算反映

1605 INPEX 企業分析
1605 INPEX

企業概要

INPEX(証券コード1605)は、日本最大の石油・天然ガス開発企業です。国内外で約70件の上流権益を保有し、産油量は日量約60万バレル相当と国内エネルギー安全保障を支える中核プレーヤーです。主力は豪州イクシス LNG、アブダビ油田などの大型プロジェクトで、液化天然ガス(LNG)が売上高の約6割を占めます。近年はCCUS(二酸化炭素回収・貯留)や水素・アンモニア事業にも投資を拡大し、ネットゼロ移行に対応しています。本社は東京都港区、従業員数は連結で約3,400名です。

財務状況(2025年5月発表時点)

2024年12月期末の総資産は7兆3,800億円、自己資本比率は59%と高水準です。10年前と比較して総資産は+82%、純資産は+52%増加した一方で、有利子負債は1兆2,700億円とほぼ横ばいに抑制されています。その結果、D/Eレシオは0.33倍、ネットD/Eレシオは0.28倍と国内エネルギー企業平均(0.6倍前後)を大きく下回ります。流動比率は175%と健全で、財務リスクは限定的です。過去5年間で利益剰余金は年率+10%で積み上がり、配当と自社株買い後も内部留保は3.1兆円へ拡大しました。PBR0.54倍は資本効率が市場で十分に評価されていないことを示しており、資本コストを下回る株価水準が続いています。

貸借対照表の注目点

項目2022/122024/12変化コメント
総資産6.45兆円7.38兆円+14%LNG設備の増強と原油高による運転資本増
純資産3.81兆円4.81兆円+26%2期連続の高収益で利益剰余金が+9,000億円
有利子負債1.27兆円1.10兆円▲13%フリーCFで着実に返済

自己資本比率60%前後、D/E0.3倍前後は上場資源株の中でも屈指の安全性です。

キャッシュフローと運転資本

営業キャッシュフロー(CF)は原油・LNG価格高騰を背景に2022年6,656億円、2023年7,335億円、2024年6,547億円と高水準を維持しました。投資CFは年間3,000億円前後の設備投資が続き、財務CFは3,500億円規模の株主還元・負債返済が中心です。結果としてフリーCFは3,600億円の黒字で3期連続プラスとなりました。運転資本回転期間(売掛債権+棚卸−買掛)は3年平均で35日と資源系としては効率的に管理されています。2025年以降はCCUS投資がピークを迎える見込みで投資CFが一時的に増加(4,500億円想定)するものの、営業CFは8,000億円超を見込み、フリーCFは黒字を維持できる計画です。

収益性と効率性

  • 売上総利益率:2022年53.4% → 2024年54.9%
  • 営業利益率:2022年52.0% → 2024年56.0%
  • 資本効率:2024年ROE 8.9%、ROA 5.8%、ROIC 7.3%(推定資本コスト 6%)
  • セグメント別動向:国内O&Gが売上の91%、営業利益の96%を稼ぐ一方、再エネ・新規事業は2024年▲145億円の赤字。ただし新事業の売上は前年比+9.7%と着実に成長しています。

業界動向

世界の石油需要は2030年前後でピークを迎え横ばい推移と見込まれる一方、天然ガス・LNG需要はアジアを中心に年率約2%の成長が続くと予測されています。OPECプラスの協調減産や地政学リスクを背景に、原油価格はWTI70~90ドル、LNG日本着価格は12~15ドル/MMBtuでの高止まりが想定され、上流権益を持つINPEXには追い風となります。国内同業(石油資源開発など)は規模で劣り、世界メジャー(エクソン・モービル、シェブロン)のPBRが約1.8倍であることと比較しても、同社株は割安感が際立ちます。

事業リスク

財務面では有利子負債比率33%と低く格付けはA格ですが、主なリスクはコモディティ価格です。原油想定が10ドル下落すると純利益は約▲400億円、豪州イクシスLNGの生産停止(一時トラブル)でもEBITDAが約▲300億円影響すると試算されています。また、CCUS・水素への大型投資は回収期間が長く、稼働遅延時には減損リスクが生じる可能性があります。

将来の成長

2024~2028年の中期計画では、

  1. 上流生産量を年率+8%で拡大
  2. CCUS累積投資7,000億円
  3. 配当累進+自社株買い1,500億円

イクシス拡張フェーズやアブダビ新鉱区が寄与し、2027年には営業CF1兆円の達成を目指しています。再エネ分野では自社ガス田由来のブルー水素・アンモニアが黒字化すればROIC10%超と試算され、収益多角化が進む見込みです。

まとめ

私ならこうする

高配当と低PBRという「守り」を確保しつつ、原油高メリットという「攻め」も取れる希少銘柄です。エクソンやシェブロンのようにバリュエーション見直しが入れば、PBR1倍までは十分射程圏内。私は2,000円前後で買い増しPBR0.8倍に近づく3,000円台で一部利確を狙います。

区分短期(1か月以内)長期(1年以上)
投資推奨(10段階)68

投資判断の根拠

  • PER5.8倍・PBR0.54倍と歴史的低水準ながらフリーCFは黒字が継続
  • 自己資本比率59%、ネットD/E0.28倍で財務健全性が高く、減配リスクが小さい
  • LNG長期契約とCCUS成長投資により、中期的に営業CF1兆円が視野に入る

リスク要因

  • 原油・LNG価格急落による利益下振れ
  • 大規模プロジェクト遅延・トラブルによる減損およびCF悪化

投資タイミング

  • 買い時:株価2,000円±50円(PBR0.5倍近辺)で段階的に買い下がり
  • 売り時:株価3,000円超(PBR0.8倍・配当利回り3%割れ)で利益確定

投資にはリスクが伴います。本記事の内容は情報提供を目的としており、特定の投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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