企業概要
村田製作所はセラミックコンデンサをはじめとする電子部品で世界首位級のシェアを持つ総合電子部品メーカーです。本社は京都府長岡京市、創業は1944年。スマートフォンやパソコン向けだけでなく、EVや自動運転、産業機器、通信インフラなど用途を拡大してきました。強みは積層セラミックコンデンサ(MLCC)、SAWフィルタ、電源モジュールなど高付加価値部品を自社一貫で開発から量産まで行う垂直統合型の製造体制です。海外売上比率は90%超で、主要顧客は米国スマートフォン大手や中国・韓国の端末メーカー、欧米車載関連企業など。研究開発費は年間2500億円規模を投じ、次世代材料や⾼周波デバイスにも積極投資しています。2025年3月期は売上高1兆7433億円、従業員数は8万名規模です。
財務状況

項目 | 金額 | 指標 |
---|---|---|
総資産 | 3兆0281億円 | – |
自己資本 | 2兆5808億円 | 自己資本比率 85.3% |
利益剰余金 | 2兆4006億円 | – |
有利子負債 | 599億円 | D/Eレシオ 0.02倍 |
現金等 | 5120億円 | – |
棚卸資産 | 3700億円 | – |
- 貸借対照表主要項目推移
総資産は5年間で約5200億円増加、うち利益剰余金が3000億円増と内部留保が拡大
有利子負債は1470億円→600億円へ減少し財務レバレッジ低下 - 財務健全性指標
自己資本比率85%、ネットD/Eレシオは実質ゼロ、インタレストカバレッジ比率は240倍と安全域 - 資本構成評価
実質無借金で資本効率を高めながらも財務余力を維持しており、今後のM&Aや自社株買い余地が大きいです。
キャッシュフローと運転資本

2025年3月期の営業キャッシュフローは4519億円(前年比+54%)、投資キャッシュフローは2080億円の支出、フリーキャッシュフローは2439億円と黒字を確保しました。財務キャッシュフローは2427億円の支出で主に自社株買いと配当です。
- 詳細分解
営業CFは減価償却費1400億円、運転資本改善300億円が貢献
投資CFの7割は生産能力増強と研究開発設備
財務CFは配当900億円、自社株買い1400億円 - 運転資本効率
売上債権回転期間55日、棚卸資産回転期間78日と前年より改善傾向 - フリーCF将来予測
設備投資抑制と増益効果で2026年3月期は2600〜2800億円の安定黒字を見込んでいます。
収益性と効率性

2025年3月期の売上総利益率34.5%、営業利益率16.0%、純利益率13.4%と前年から大幅改善しました。ROEは9.06%、ROAは7.72%、ROICは10.8%と資本効率も回復局面です。
- セグメント別収益
コンポーネント事業 売上1兆300億円 営業利益2752億円 営業利益率26.7%
デバイスモジュール事業 売上6972億円 営業利益100億円 営業利益率1.4%
その他事業は引き続き損失54億円
業界動向

世界MLCC市場は2024年に2兆円規模、スマートフォン向けは横ばいながら、EV・ADAS・データセンタ向けが年率15%で成長しています。競合はサムスン電機、太陽誘電、TDKなど。村田製作所は高容量小型品で50%近いシェアを維持し、車載向けでは欧米Tier1と長期供給契約を拡大中。5G基地局、AIサーバ向け高周波フィルタも伸びています。PBR1.5倍は同業平均1.8倍を下回り、株価指標面で相対的に割安です。
事業リスク

原材料であるパラジウムなど希少金属価格高騰はコストに直結します。また主要顧客が集中するスマートフォン市場の需要変動や米中摩擦によるサプライチェーン分断は収益下押し要因です。為替は円高に振れると営業利益が100億円単位で減少する感応度があります。
- 財務リスク定量
有利子負債依存度2%、利払い負担は営業利益の0.3%と低リスク - 事業継続性
国内外に多拠点分散生産しているものの、京都本社工場停止時の影響は大きいです。 - 市場環境変化影響度
スマホ出荷が10%減少すると営業利益が約300億円減少するシナリオを想定
将来の成長

中期計画では2028年3月期に売上2兆2000億円、営業利益率18%を目標としています。
- 中期経営計画実現性
車載向けMLCCとパワーインダクタで年平均9%成長を前提としており、市場拡大とシェア維持で達成可能性は高いです。 - 新規事業と投資
全固体電池やパワー半導体用基板で累計1500億円を投資予定、24年度後半から売上寄与見込み。投資回収期間は7年を試算。 - 成長シナリオ
EV化加速、6G通信、AI半導体需要増加を背景に、2027年以降も営業利益年率10%成長が期待されます。
投資評価まとめ

私ならこうする
足元のスマホ市況は底打ち感が出ています。財務は超堅実で自社株買いも続くため下値は限定的と判断します。短期は決算期待で2200円台までの押し目買い、長期は車載需要拡大を待ってじっくりホールドが有効だと思います。
投資推奨
短期投資 6
長期投資 8
投資判断の根拠
- コンポーネント事業の高い利益率と車載向け成長余地
- 無借金に近い財務と潤沢なフリーキャッシュフロー
- 株主還元強化で配当と自社株買いが継続見通し
リスク要因
- スマートフォン需要の想定以上の減速
- 円高進行による収益目減り
投資タイミング
買い時 2000〜2100円に接近した押し目 自己株買いの需給下支えが根拠
売り時 2500円を超えPER26倍接近時 バリュエーション過熱を警戒
参考サイト
「投資にはリスクが伴います。本記事の内容は情報提供を目的としており、特定の投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。」
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